これは、「新耳袋」の著者で怪異収集家という肩書きをもつ中山市朗氏が、千日前の寿司屋で女性編集者と打合せをしている時の話。

打合せの最中、中山氏の後ろの店の入口の自動ドアが勝手に開いた。女性編集者は目を広げて固まっている。「なんや?」と思ってふと店の奥を見ると、水商売風の女性がカウンターにいつの間にか一人で座っている。
「あれ、あんな子、おったかいな?」と思っていると、板前さんも注文もとらず、茶も出す様子もない。
打合せの続きをしようと思い、女性編集者に声をかけると、また女性編集者が大きく目を見開いて固まっている。そしてまた勝手に自動ドアが開いて、閉まった。
すると、もう店内には先ほどまで座っていた水商売風の女性がいない。
女性編集者はその女性が出入りするのを一部始終見ていたそうだが、中山氏にはそれが見えなかった。
ただ、カウンターに座っている所しか見えなかった。店を出るときに板前にそれとなく聞いてみた。「さっき、一人で女の子きて座ってへんかった?」と。
すると板前が「あ、お客はん、見えはりました?ここ、千日前ですから」とあっけらかんと答えた。

どうもここは、日常茶飯事に起きるらしい。