899 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:2001/03/01(木) 18:40
作家の西丸震也氏のはなし。うろ覚えなので大意だけ・・・


その頃私は地方の水産試験場で働いていた。工場の二階の空き部屋にベット

などの家具を運び込み住んでいたのだが、夜になるとそこに女の幽霊が出る

ようになった。まだ若い髪の長い女性で、どこを見るともなくうつろな目を

しており、うつむきかげんで部屋の隅に立つのだ。悪さもしないし、特に何

を訴えるわけでもないので、私はしばらくの間ほうっておいた。


 しかし、あまり気持ちのいいものではない。女の立つ位置はいつも決まっ

ているので、ベットとその場所の間についたてを置いて見えないようにした。

2.3日はそれでうまくいっていたのだが、こんどはついたてのこちら側、つ

まり私のベットのすぐ側に女が立つようになってしまった。いまや女は私の

寝顔を覗き込むようなかたちだ。私は意地になってしまい、無視を決め込んだ。


 そのまま幾日か経ったある夜、私が寝ているといつものように女が姿をあ

らわした。しかし今日は何かか違う、何が違うんだろうと考えた私は、その

理由に気づいてゾッとした。いつもは焦点のあっていない女の目が、その日

に限って私の目の奧をじっと見つめてきているのだ。女と目を合わすと布団

の中が氷のように冷たくなってくる。いけないと思い必死で目をそらし、布

団の中に潜り込んで丸くなるとだんだんと温もりが戻ってきた。ほっとした

拍子につい女の目を見てしまった。また氷のような冷たさに逆戻りである。

その繰り返しを何度続けただろうか、気がつくと朝になっていた。


 このままでは命が危ないと思った私は、その日のうちに水産試験場を辞め

実家に帰った。その後、その女の幽霊は現れることはなかった。