引越しのバイトのときの話。

俺は学生でつなぎみたいな感じでたまに引越しのバイトをするんだけど、
ほとんどは長期の休みかそうでなくても休日がほとんどなわけです。
そうでないのはたまに真夜中に夜逃げとかがあるらしい。
これは荷物も少ないし口止め料ももらえるのでかなりおいしいバイトだとか。
俺は担当したことないですけどね。
それで、この前そこの会社から連絡がかかってきたんです。
「明日入れるか?」
明日は平日なんですよ。夜逃げですか?ってわくわくして聞いたらいや、昼間だって。
それでもなぜか夜逃げ並みに切羽詰っている感じだったらしい。
それでうちの会社も切羽詰ってバイト探しているって。
ちょうど俺は明日の講義は休講と出席を取らないのだけだったからその仕事を担当しました。
仕事は二人一組でやるサイズであと一人誰か心当たりないか?と聞かれたので同じスケジュールだった友達に声をかけて、そいつとやることにしました。

次の日に会社によって制服と車を借りてその人のうちに行きました。
少しボロだけど2DKで少し広い部屋がほしかったらこんなもんかなって感じのとこ。
その人は20代半ばぐらいの普通のOLって感じの人。
聞いてみると確かにその通りで今日は仕事を休んで引越しらしい。
「やんなっちゃうよね」ってこぼしてた。
ただ、その人朝一番からすごい疲れきったような顔していました。
「大丈夫ですか?」って聞くと。
「大丈夫。ちょっとおなか痛いだけだから。」って弱弱しく笑ってた。
荷物も急にまとめましたって感じで服や食器はダンボールに詰まってたんだけどコンセントが抜けてなかったり冷蔵庫にまだ少し物が入ってたりしていました。
だからまずはその辺のものをつめていく作業からお手伝いです。
まぁこのへんは自分のものですから本人がほとんどメインでやっていたんですが、
俺が弾みでクマのキーホルダー(つるしぐまってやつ)を落としたんですよね。
クマはダンボールとかで散らかっている方に転がっていきました。
結構転がったなと思って拾いに行ったんですがないんですよね。
そんな細かいところなんてそうないしすぐ見つかるはずなのに。
「こっちのほうに何か転がってきませんでした?」って聞くと。
「何かなくしたの?」
「あ、はい。」
「あ~・・・たぶん見つからないと思うよ。もういいから。最後だし。」って。
そのあとその辺を片付けたりダンボールをどかしていっても確かに見つかりませんでした
それから電化製品とかつめたり養生したりするんですが、そのとき電話の線だけが抜いてあったのが印象的でした。
そんな作業も結局は1時間ぐらいで終わりました。
そしたら少し落ち着いてきたのか、その人が俺と友達に少し疲れたでしょうって缶コーヒーをくれました。
俺と友達は素直にそれに甘んじて休憩しました。
荷物をまとめたせいで部屋がすごく広く見えました。
それに意外と風通しや日当たりもいい。こりゃなかなかだなと思い、
「いい部屋ですね。」と言ったら、
「部屋だって見かけによらないものよ。」って。
そんなこと言われてリアクションに困ってはぁって感じでいると、それが気に障ったのか、
「それじゃあ・・・そこの洋服ダンスを運んでみてよ。」って言いました。
何の変哲もない洋服ダンスでしたよ。小さめの一人暮らしサイズ。
友達と両側を支えて運んでいると、
「そこの裏の壁どうなってた?」って聞いてきました。
壁を振り返ってみて見ましたが、普通の、何の変哲もない壁でした。
今までタンスを置いていた境界線すらわかりませんでした。
「別に、何もないですよ?」
「・・・そう。」
その人は何か言いたそうでしたが、もうどうでもよくなった感じでした。
そして荷物も全部運び出しました。
最後に、出て行くときに何かためらう感じがしたんで、
「どうしたんですか?」って聞くと。
「ちょっと待って。」と言って俺と友達に塩を振り掛けました。
あとその人小さいゴムボールを一個残していきました。
「いいんですか?」って聞くと。
「いいの、私のじゃないから。」

それから新居の方に荷物を運び入れて「ご苦労様でした。」と言われて終わりです。
新居の方は前よりも日当たりがいいところで新しい感じの1LDKでした。